2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『ハッピー・デス・デイ』 Happy Death Day (2017)

共感のためにまず誰かを憎まなければならない。キャンパスを割拠する諸文化圏はことごとく揶揄の対象だが、憎悪の中心にあるのは全てを見下すソロリティであり、そこに属するヒロイン自身である。しかしこのアバズレはヒロインであり、憎むわけにはいかない…

アンドレアス・エシュバッハ『NSA』

英語圏の歴史改変SFと比較すれば、ドイツ社会を叙述するにあたり援用される知見の質に大きな違いがある。ヒトラーの出番は一場面にすぎないが、その言動は伝記を踏まえた造形を越えたりはしない。主人公男が官邸でヒトラーと面会するプロセスに費やされる情…

『殺さない彼と死なない彼女』 (2019)

てよだわ言葉で観念的な恋愛論を交わすきゃぴ子と地味子を捕捉するのは望遠の狭い画角である。舞台調の芝居と台詞がリアリズムの叙体から浮き上がり、きゃぴ子の課題を空論に終始させる。木造二階建てアパートの扉を開けると彼女の自室がある。その作り込ま…

『シン・仮面ライダー』 (2023)

用意周到な人がそう自称するのは用意周到ではない。万が一ドジったときの見栄えを考え、この手の人は自分に対する期待値を下げてくるのではないか。 コウモリオーグの件で用意周到の割にルリルリが役に立たないのはフェイントだが、後々、真正のドジを踏んで…