2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

柘植行人研究 その大義と性欲

わざわざ決起の前日に危険を冒して南雲隊長に会ってしまう。柘植行人という人は、相当、性欲が強いのでないか。わたしとしては、性欲で大義を危うくする柘植に憤りを覚える。貴様は「隊長ぉぉぉ」の叫びを忘れたというのか。 が、柘植には柘植の理屈があるよ…

小説『春の愉楽を抱きしめる(後篇)』

1 ブルージュのその地下部屋は一泊が100フランにも満たなかった。 階段を下りて扉を開くと、幅2メートルの部屋に机と衣装箪笥とベッドが詰め込まれている。入口から見て右手には洗面台。そこから壁に沿ってアームチェアと机と箪笥が並んでいる。シミの付いた…

小説『春の愉楽を抱きしめる(前篇)』

0 国境の丘に残置された童貞特殊部隊は、来寇した赤軍義勇兵に重囲され全滅の秋を迎えようとしていた。数日に渡る殺し合いの間、数百トンの鉄塊に耐えてきた掩蓋陣地が地鳴とともに陥没したのだった。陣地直下に掘削された坑道が爆破されたのである。 爆轟の…

『おみおくりの作法』(2013) Still Life

単身者にとっては恐怖映画であろう。四十路半ばの単身オッサン(エディ・マーサン)は民生委員である。彼は日々、孤独死の後始末をやっている。このままいけば自分も彼らの仲間入りである。 受け手が単身者ならば一刻も早くこの恐怖から逃れたいはずだ。映画…

フィリップ・クローデル 『ブロデックの報告書』

『沈黙の艦隊』にトロッコ問題を扱った話数がある。党首討論でアンカーが党首たちにトロッコ問題を提示する。 10名を乗せた救命いかだが漂流中である。 そこに1名の伝染病患者が出る。致死性である。 あなたならどうすると問われるのである。 不幸の総和を最…