読書
第二帝政の成立でフランスは高度成長期を迎えた。経済成長率の国際比較において劣後してきたフランス経済は、第二帝政期下で例外的なパフォーマンスを発揮した。1855から64年にかけてフランスは他のいかなる国々をも凌駕する経済成長を遂げ、国民所得は一挙…
格差婚は破綻した。中産階級の青年は貴族令嬢と将来を誓った。令嬢は王族との結婚を迫られ、青年との恋を断念する。王族の嫉妬を買った青年は当局に追われる身となる。 男の本源的なつらみやくやしみの観察が主旨であれば、この設定はふさわしくない。彼が追…
数学的諸構造のほうが人間のうちで自分自身を思考するのである(ヘーゲル) 真理とはこれ以外の仕方ではありえないものである。 ほかにあり様がないために、あらゆる状況に妥当する。 あらゆる状況に対応する真理は、あらゆる事態を凝縮する。 多様な様態を…
宇宙から近代社会が襲来し地上の奴隷社会は今や解体されつつある。近代に敗北した伝統社会の男たちは去勢のストレスにさいなまれる。現地民の自立を目指した活動家の老人は内ゲバに敗れ隠遁生活を送っている。植民地で叛乱奴隷と戦った軍人は敗残兵として本…
戦前の日本は今日の途上国に匹敵する格差社会であった。ジニ係数は上昇をつづけ、1905年の0.473から23年の0.529に上昇し、37年には0.573に達した。 格差の要因は農業の不振にある。非農家の1人当たり実質所得は1910年代以降着実に上昇した。農家の所得は戦前…
近代エジプトが歴史改編の題材になりうるのは、かつて産業化を試み失敗したくやしみの歴史があるからだ。かの地では奴隷を工場で働かせたため、工場製品を消費する中間層が形成されず産業化は頓挫したのだった。 近代化や産業化を試みる歴史改編に問われるの…
革命を人為的な自作農の創設による中間層のアンロックと定義すれば、日本列島は過去に2度、革命を目撃している。太閤検地と農地解放である。自作農の創設には地主に集積した土地の再配分をともなうため、貴族や領主層の抵抗を排除する力がなければ実現はおぼ…
景物の情報量には一般文芸のようなコストがかかっている。社会経済の設定がその精密度に追いつきそうもない。現実の社会経済を参照して景物を克明にできる社会時評の利点はときに仇となる。ヒロインの収入は母の介護料に大半が消え、スキマバイトをかけ持ち…
近世におけるイギリスの人口動態の特徴は、経済成長に比べ人口増が抑制的だった点にある。この間、イギリス国民の栄養状態は改善していったのだが、19世紀に入りふたたび人口が増加に転じると食料事情は悪化した。経済成長は栄養や健康の改善に貢献できなく…
欧州を議会の起源にしたのは、諸国を不断の緊張関係に置いた地理的環境である。議会とは課税承認の場であり、武力衝突をともなう度重なる摩擦によって大きな財政的努力を強いられた国々は、負担能力のある貴族たちの好意を当てにするほかなかった。君主は租…
黒死病以前におけるイギリスの人口動態はマルサスの想定にかなった挙動をしていた。マルサスの世界観では一定の土地が養いうる人口には限界があり、土地が増えない限り人口は頭打ちになる。イギリスの人口は黒死病以前にすでに収容限界に達していたと考えら…
任務にしくじったヒロインは職業人としての自信を失っている。彼女の課題の根底にはパターナルな母の抑圧がある。母は常に娘の資質を疑い、今やその疑念は実証されてしまった。ヒロインの課題とその解決法はかくして定義される。母の抑圧を克服すればヒロイ…
医者にお使いイベントをもたらすのは、行方不明になった認知症の患者である。物語のヴィランとなるのは、このミッションを妨害する人的要因である。癇癪持ちの娘が往診に出ようとする母に同行を強要する。 運送屋にとってもヴィランは似たように立ち現れる。…
キャラクターを区分するのは文化相対の作法であり、相対性を競う争いが暗に作者をも巻き込んで進行している。文化相対の作法に準拠できたキャラへ読者の好意が誘導される。この原則は冒頭から苛烈に適用される。交易商に宣教師が呼びかける場面だ。 「わが子…
古代人は存在と行為が互換する機構を想像してきた。その宇宙では問題自体が答えをすでに包含し、災厄に際して何が倫理的に正しいふるまいか人間はいちいち狼狽するひつようがない。問題自体が答えをともなうために、問題が起こっても自動的に解決されてしま…
フィクションに通じるだけでモテてしまうトゥルーロマンスのような邪念は、フィクションの効用を証明できなければ成立しないだろう。フィクションは何の役に立つのか。この問題意識は警備ユニットの中で形を変えながら幾度も持ち上がってくる。前の現場では…
淘汰による馴致のすえに細菌は言語を獲得する。ストレスにさらせば彼らは不快を示す文字の形に群集する。細菌には不快を覚える意識がなく、その言語は刺激に対する自動的な反応にすぎないのであり、感情の訴えではない。意識がないAIはチェスの勝敗に感情を…
都市国家は基本的に外征戦争ができない政体である。自営農民が市民兵となって軍事力を供給するために、彼らを長期間拘束する戦争は困難になる。 イタリア半島が統一された前266年までに地中海世界の列強は職業的文官に支えられた独裁制を採用し、職業軍隊を…
ポリスは文明崩壊のカオスに際して誕生した共同で防衛にあたる仕組みであり、その成員はみな兵役の義務を負う。もともと王権から貴族制に移行して成立した経緯から、ポリスでは王権はタブーである。王権のほかに官僚制を造営できる仕組みが知られていない当…
バイオな災厄が男に活躍の場を与えてハーレムが形成される機序は逆転していて、能力につり合わない厚遇を裏付けるために災厄が引き寄せられる。寄生物学者の技能が役に立たない状況に無能感をあおられる一方で、役に立つ強化人間たちが男を好きすぎるのはい…
グラフのx軸はある家計が生産できる食料数を示す。y軸は衣料の生産数である。食料・衣料それぞれの生産可能数はトレードオフの関係にある。食糧を生産すればそれだけ衣類を生産する時間が無くなる。グラフの曲線はその関係を示している。 曲線を以下の式で表…
女性運動家が性規範を敵視するどころか「本物の男とは」と男性性を定義し男らしさを称揚する世界観であり、実体は政治小説とはほぼ遠い。ディストピアの生成過程と有様には社会科学の裏付けはなくSFらしくもない。バイブルベルトの拡大は特定個人の演説力に…
状況をありのままに受容すれば対応する答えは自ずと励起されるはずだ。観念論の説くこの現場主義はありのままに受け取るための観察技法を課題としていて、その限りにおいて人間主観的なのだが、現場に包摂される感覚を「受容」に見出せば一転して没我的とな…
近代と共同体では格差を受忍させる仕組みが異なる。能力基準ではなく血縁で地位を決める共同体には選外者の自尊心を損なわない利点がある。選外になったとしても能力を否定されたわけではない。 近代社会は責任の概念を導入して格差の受忍を試みる。格差を自…
19世紀において国家による産業育成の成否を決めたのは、英国との競争から国内産業を保護できる国の能力であった。19世紀初頭にそれができたのはほんの数か国にすぎない。欧州大陸で紡績産業が勃興したのはフランス革命に続く大陸封鎖の結果であり、北米の工…
小柄で猛烈な女がおたく度テストで人を試してくる。男はテストに合格する。この邪念はキャラクターを造形する方法を教えてくれている。彼女はビールの泡を口の周りにつけたりと無頼アピールに余念がない。それが鼻についてくれば高位互換者を投入して女を劣…
正義はあると想定するのはよいとして、そこで人の数だけ正義があると言ってしまうといかにも弱々しく正義らしくない。唯一無二でなければ正義の感じがしてこない。 現実は多様な相を抱えるために、正義が実際に施行されると各々状況に応じて正義は分裂して単…
作家の脳には他者の苦痛でドーパミンが生成されてしまう器質的なエラーがあり、それが男をいら立たせる。自分の書くゴアは商業的配慮の結果かそれともドーパミン中毒の産物にすぎないのか。倫理感の証を立てるべく彼は治療を受け詩神に見捨てられるのだが、…
江戸時代の初期には耕作地は全て自作農に所有されていた。中期になり農村に地主層が勃興すると小作地への転換が始まり、江戸末期には2割が、1930年代には5割が小作地となり農村の貧窮化は進んでいった。近代のアンロックは幕藩体制下では不安定だった所有権…
その事業には動機と過程が欠落している。観測データの収集は基礎研究の動機たり得るが、動機に実体がなくかつ規模が大きくなればファイナンスが困難になり語るべき課題が生じる。単なるデータ収集を越える具体的な動機をどう設定するか。それが無理ならどう…