アニメ
わたしは三石琴乃を狂愛するがミサトさんは嫌いなので、彼女に尽くす日向マコトの趣味がわからない。わからないから『新極妻』の本田博太郎のように自分のナイト振りに酔ってると解したくなる。航空戦艦らしい屈折といえばいいか。 旧劇の人類補完計画で媚び…
幼女が常世をさまよう冒頭は「コスモナウト」の援用だろう。コスモナウトの冒頭では、タカキ君が明里の幻とマヨイガでデートする様子が活写された。幼いすずめもマヨイガ酷似の曠野に迷い込んでいる。顔を上げるとその先には明里っぽい人影がある。わたしは…
ギャッと一瞬で地獄に突き落とされるのが『ちょっと思い出しただけ』(2022)であった。女は既婚なのだが、受け手をギャッとさせるべく冒頭からこの情報は隠される。対して秒速は真綿で首を締めにかかる。受け手が知りたくてやまない男女のその後の境遇をジワ…
「やさしくしないで」はかなしい。花苗の想いは男の何かに届きはした。背後で打ちあがるH-IIは射精の暗喩である。ところが、届いたからこそ少女は想いが絶たれたと知る。発射されたスペルマは自分には向かってこない。天空を目指して飛び去ってまった。男は…
片思いは実らなかった。男はゲイであるから、女の想いに応え得ない。だからといって、ゲイだからダメでしたでは話にならない。恋とは別の形で女の想いに報いる必要がある。 カメラ魔である女は男の尽力を観察していた。当時の男は女の好意に気づかない。後年…
大雪の岩舟で待ち続けたことで明里には造形上のジレンマが誕生した、と見てよい。惨劇は、タカキ君が明里の真意を誤解して始まったのだが、その思い込みに咎を負わせるのは酷なのである。待ち続けた彼女に好意を確信するのは自然であって、タカキ君にそう思…
トラブルを抱えたヒロインに奉仕する点では、カリオストロのルパンはジェームズ・ボンドに近い。しかしボンドガールへの奉仕には下心がある。カリオストロのルパンにはこれがない。性欲のないボンドがヒロインに奉仕するのだから話は自然気持ち悪くなる。 こ…
わざわざ決起の前日に危険を冒して南雲隊長に会ってしまう。柘植行人という人は、相当、性欲が強いのでないか。わたしとしては、性欲で大義を危うくする柘植に憤りを覚える。貴様は「隊長ぉぉぉ」の叫びを忘れたというのか。 が、柘植には柘植の理屈があるよ…
容態のおもわしくない妻は、もう長い間の病床生活の慣わしから、澄みきった世界のなかに呼吸づくことも身につているようだった。 『美しき死の岸に』 昔書いたことだが、原民喜の印象は最初はすこぶる悪かった。死に瀕する妻貞恵を美化する厚顔に怖気を震っ…
男女の成熟差を課題にした点で、『言の葉』は『秒速』の「桜花抄」を継承している。「桜花抄」のタカキ君は明里を諦めようとしたができなかった。しかし明里は揺らがない。この恋は叶わないと認識している。 ユキノも同様である。タカオとの関係をこれ以上進…
明里にどうしたら追いつけるのか。秒速でタカキ君に与えられた課題である。つまり、明里の方が先に進んでいるのだが、如何なる意味において彼女はそうなのか。先回議論したように、明里はタカキ君と訣別することができた。この遠距離恋愛は不可能だと正しく…
秒速には『トト・ザ・ヒーロー』の影響が認められると指摘した。その際、篠原美香との破局の後に新海誠をアレを見たとなると相当効くものがあろうと空想したが、先日、久しぶりに『ほしのこえ』を見返したらトトから引用したと思われるモチーフがすでに登場…
『ほしのこえ』は驚嘆すべき物語である。リリース当時とは全く異なる意味合いでわたしたちの涙腺を揺さぶってくる。 本来は結末がぼかされた話だった。ミカコとノボルの顛末は、幾分かの希望を交えながらも、作中では明らかにされなかった。ところが、今日の…
『トト・ザ・ヒーロー』は『秒速』の構成や演出に大きな影響を与えたと考えられるが、同時に秒速を『トト』の結末に対する返歌だと見なすこともできる。 両作ともモチーフは男の未練であり、別れた女に呪縛された男が彷徨を重ねる。『トト』のラストパートは…
映像編集に際しては理想の間を追求すべきであるが、同時に商業作品であるから定尺というものがある。たとえば、U局ならば20分40秒。作業が進むにつれて尺は短くなっていく。このペースでやればどのくらい切れるのかすぐに見えてくる。押し気味になり、今の調…
水族館で燈子が侑の姿を見失う件がある。カットは燈子の遠景となり、辺りに侑の姿は見当たらない。燈子は侑を探すのだが、続くカットで不可思議なことが起こる。燈子の手が接写されると、今まで姿の見えなかった侑の手が IN して握ってくるのだ。彼女は何処…
戦前の宮中のドレスコードは、同じ宮中であっても表御座所と御内儀を往来するたびに天皇に着替えを要請する。明治期の場合、表御座所では軍服を着用し御内儀ではフロックコートになる。大正と昭和戦前期では、表御座所では軍服だが御内儀ではスーツになる。1…
新人賞を獲得したアイドルたちが舞台で祝福を受けている。舞台袖からその模様を観察していたマネージャーの紡が感極まる。これが紡の最後の登場カットである。歓声にかき消されるように彼女の嗚咽は聴こえない。歓声の渦に圧され消え入りそうな、置き去りに…
恋慕の未練を断つためには、求愛の対象にはっきりと拒絶されねばならない。しかし、求愛の対象が失われている状況では拒絶を被る手法が使えず、未練の苦しみから如何に脱するか、その手法を探求せねばならなくなる*1。『秒速』と『よりもい』が共通して設定…
不可解な箇所はふたつある。いずれにおいても、紅旗征戎に直接には触れたがらない深夜アニメにしては生々しい話題が唐突に挿入される。不利な観測ルートを割り当てられた敗戦国の悲哀が回想されるのだ。 わたしにはこの唐突さに思い当たるものがあった。小津…
後藤隊長といえども警察官であるから、荒川逮捕の際、犯罪教唆のようなことを言ってしまう彼には引っ掛かりを覚える。「どうして柘植の傍にいない」である。言いかえれば、「自分なら柘植の傍にいる」という羨望が含まれるのだが、謀反気への憧憬という青い…
この物語が到達する結論には、悲惨なようでいてどこか明朗なところがある。ラストカットを構成する視座が客観的で、それが救いになっている。それまでの物語はタカキ君か花苗の視点によって担われてきた。ところがタカキ君と明理が立ち去り今や無人となった…
その男にとってあの女はどれほど希少な存在なのか。あるいはその女はあの男のどこに惹かれたのか。劇中にあって恋愛感情を誘発して然るべき個人の属性は、たとえば長澤まさみに関していえば記号的といえるほど露骨に設定されている。クレーマーをあしらう長…
ウォシャウスキーの『スピード・レーサー』を連想したのである。CGI車輛と本編が絡む構成が類似している。もっとも、多くの商業アニメと同様に『ガルパン』はCGIとセル芝居のカットを基本的に分離する形でシーンを構成しているので、『スピード・レーサー』…
『エヴァンゲリオン』がどうもわからない。少年の煩悶する理由がよく伝わってこないのである。放映時にも薄々気になってはいたのだが、後年、見返してみてると、作品との距離感もあって、シンちゃんの悩みに実体が感ぜられず共感を得られない。 親父との不和…
この話には幼少のころ不可解を覚えたところがある。マイクはなぜジルの求愛にこたえようとしないのか、これがよくわからない。今見返してみると、この辺の心理は明瞭に伝わってきて、戦争で壊された帰還兵が、仕事ができるという徳性を失った結果、恋愛がで…
『劒岳 点の記』の宮崎あおいの芝居には強烈な印象が残っている。夫の浅野忠信に対する宮崎の品の作り様が場違いも甚だしく、演出意図に疑問を感じざるを得なかった。おそらくは真性の童貞である木村大作が宮崎の魔性に取り込まれてしまったのだ。 『言の葉…
アセイラムの慈愛体質は性愛を理解しない。スレインを救ってくれと彼女は伊奈帆に乞うが、男視点からみればこれはひどい話で、実際のところ、スレインを救えるのは手前しかいない。 性愛を理解しないから、好意の顕現に何の躊躇もない。童貞はこれを誤解して…
いまだ恋愛が成就していない懸想の状態が、生活に支障を及ぼすまでに重篤化するのであれば、もはや恥も外聞もない。求愛を試みて、かかる状態を終わらせねば、前に進めなくなる。その際、最優先されるのは終わらせることであって、成就の可否は二の次になる…
わたしが『言の葉の庭』で強烈な違和感を覚えるのは、ドコモタワーを俯瞰する超地上的なカットである。空撮で大写しになったドコモタワーのいったい何を以て、キャラの感情の振幅を表現しようとしているのか、この関連がよくわからないのである。同じ違和感…