甲斐性のアイロニー 『機動警察パトレイバー2』


 後藤隊長といえども警察官であるから、荒川逮捕の際、犯罪教唆のようなことを言ってしまう彼には引っ掛かりを覚える。「どうして柘植の傍にいない」である。言いかえれば、「自分なら柘植の傍にいる」という羨望が含まれるのだが、謀反気への憧憬という青いロマンティシズムの発露にしては声色に少し哀切がある。
 後藤隊長はこの直前に南雲隊長に告っている。そのことが、柘植や荒川の謀叛に対する羨望を、内容はともあれ何かでかいことをやれる男の甲斐性へのそれに接続するのである。謀反気への憧憬の基底にあるのはしのぶさんとセックスしたいという本音なのである。これほど切実なことはないから、「どうして柘植の傍にいない」がイヤらしく響かない。