2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ティム・パワーズ『アヌビスの門』

新たな状況にキャラクターを放り込むことで物語を始めるとする。状況は劇中の人物にとっても受け手にとっても未知であるから、状況説明の営みが不自然とはならず、物語への導入が円滑になるだろう。 この手の作劇には今一つの利点もある。新たな状況に対処せ…

エミール・ゾラ 『居酒屋』

受け手が好意を寄せるキャラクターがある。われわれは彼女の幸福と成功を願う。その一方で、このヒロインに寄生する男がいる。ヒロインに好意があるゆえに男を憎悪するわれわれは、彼の破滅を願う。しかし、男がヒロインに寄生している以上、ヒロインを破滅…