小島信夫 『微笑』 [1954]

殉教・微笑 (講談社文芸文庫)
不具の暴力は露悪趣味でカバーされ、やがて知性が生ずれば、療養の過程はロードムービーとして物語の価値へ貢献し、凝固した肉体は官能的な戯れとして処理もされる。



倫理上のコストと技芸の交叉は、悲惨さと横柄の兼ね合いから収受されるヒューモアで、粉飾されたように思われる。当事者感覚の受益が、貧乏人が貧乏人を搾取するような図に近接しつつもけっきょくは外へ向かうあたりに、物語運用の功利性があるのだ。