『大病人』とは何だったのか

大病人』は『マルタイ』の前哨戦だ。どちらも人を莫迦にした劇中劇から始まり、プロデューサー田中明夫の人を莫迦にした頭部は、悪徳弁護士・江守徹の人を莫迦にした頭部に引き継がれる。本多俊之の劇伴も相変わらずである。『ミンボーの女』が『大病人』&『マルタイ』と『マルサ』を分けたと言ってもよい。



大病人』がしねフィルの不興をかうのはくやしいかぎりだが、そのいら立ちはわからんでもない。劇中劇のソープドラマ臭はあんまりだし、津川雅彦木内みどりも猛烈な目パチを繰り出し、やはり人を莫迦にしてる。伊丹の記録映画的なリアリズムがコミカルなキャラクターとかみ合わない。



告知された三國の反応もすさまじい。気丈を装いながらも体は猛烈に震え始める。あまりの振動に、驚いた津川が三國を抱きかかえる。そして、ここまで来てようやく、あえてキャラの物腰をコミカルにした意味がわかって来る。あそこまで過剰にしなければ、三國×津川という濃厚なスキンシップが成り立たないのだ。この感覚は『マルタイ』にあって『マルサ』に欠けるものである。