2008-06-01から1日間の記事一覧

私は、一度きりという不可逆のよろこびに、微笑した (4)

虚ろに閉塞した星のない空だった。幼女は、物言わぬ暗い海の前景をゆるやかな足取りで歩いていた。重く湿った風が微かな潮の香りを運んでいた。 消え入るような着信音の調べに、幼女は足をとどめた。砂地の柔らかい路に腰を下ろすと、遠い彼方から潮騒の響き…