語彙5000語増強計画

 SVL12000語から未知の単語を拾ってAnkiにぶち込んだのは、6年ほど前のことだ。ついでに、SVLとは重複しない頻出単語リスト(3000語)からも同様のぶち込みを行った。かくして、わたしの語彙力は15000語となった。
 15000語というのはネイティヴでいえば小学生の語彙らしいが、語彙の限られる専門書を読む分にはこれでもあまり不自由しない。
 安易な文章でいえば、これまで読んだ中ではフクヤマさんのが突出していた。
 難しい単語も構文も用いないその文体は、ネイティヴならぬわたしには好感がもてた。一度、フクヤマさんの肉声もNPRで聴いたことがある。飾らぬ文体から想像される通りの穏和な話しぶりであった。
Political Order and Political Decay: From the Industrial Revolution to the Globalisation of Democracy ちなみに読んだのは Political Order and Political Decay とThe Origins of Political Order。前者ではフクヤマさん、明治の元老に好意的な感想を漏らして、日本語話者であるわたしの鼻腔を膨らませた。その余韻が残るうちに、Ramseyer & Rosenbluth(1998)を読んだ(こちらは邦訳)ものだから、ウヌレ〇唐めと激高した......がこれは余談である。
 要は、15000の語彙でダラダラと書見を続けてきたのであるが、それなりに読めるといえどもすぐに欲求不満を覚えるようになった。せめて中学生くらいは、つまり最低20000語は欲しいものだとムラムラしてきたのだ。
 去年暮である。
 突如、仕事のスケジュールが後ろにずれた。2月一杯まで仕事が薄くなることがわかった。そこで、長年放置してきた語彙力増強を試みることにしたのだった。一日100語覚えれば、5000語なら50日で終わるでないか。そうほくそ笑んだのである。
 まず正月休みを利用して極限の英単語15000~21000語レベルから知らぬ単語を抽出してAnkiにぶち込んだ。全部で4557語である。1月の中旬からAnkiを回し始めて、つい先日、4557語を消化した。
 今回、Ankiを回すにあたって試したいことがあった。
 100語程度なら記憶は容易である。しかし覚えた傍から忘れていくので、復習カードが次第に累積して手に負えなくなる。通常は出題数に制限を設けるのだが、今回はそれをあえて外した。それで100語ずつ覚えていって、最後はどれほどの出題数になり、どれほど時間がかかるか、試すことにしたのである。
 結果は以下の通り。4557語を消化した翌日、つまり本日の統計である。復習枚数は964枚で学習時間は3時間強であった。




 900枚を超えたのは3月に入るあたりで、最後の4日ほどは4時間以上時間を費やした。Ankiを4時間回すのに何の痛痒もない。むしろ楽しい。しかし、次第に繁忙になりつつある上で4時間ともなれば睡眠時間を削って時間を抽出する羽目となり、さすがにしんどくなった。
 ただ、概して見れば、一日3時間が相場で閑散期ならば十分行ける数値ではないか。おそらく、この960枚がピークで明日には早くも50枚減少する。すぐに日常に復帰できるだろう。また復習カードの減り方を観測する楽しみもある。
 一年に一か月くらいは、Ankiを集中して回すのはいいかもしれん。そうすれば、生きてるうちに仏独に加えて古典語にも手が届きそうな感じがしてきて、鼻腔の膨らみを覚えた。