『るろうに剣心 最終章 The Final』(2021)

前回の求婚を受けて、冒頭から剣心を意識しまくりな薫殿であったが、薫殿が嫌いなわたしにとってはこれが実に悩ましい。かわゆいのである。剣心の方は昔の女を思い出してしまって、薫殿は放置される。これはよい兆候だ。捨て置かれた薫殿はヒートアップするし、何よりも本シリーズ最大の難点が回避される利点もある。剣心のギラギラな性欲をいかに隠し通すか。昔の女を思い出すことで彼はいい塩梅に萎え、話の骨子に沿った枯れ具合になる。


と、ここで最初の笑いが来る。昔の女が薫殿にバレてしまう。(え、バツイチ?)と驚愕する薫殿。これはいけない。枯れぬ性欲問題は棚上げに出来ても、また別の難点が露わになる。剣心オッサン問題である。少年誌の主人公しては年齢設定が微妙なために、剣心は絶えず物語を加齢臭の影で脅かす。これが枯れぬ性欲問題と結合すると、殺人兵器のオッサンが性欲ゆえに小娘に操縦されるつらさが横溢してくる。バツイチだとバレることで加齢臭が吹き出すのだ。


他方で、有村架純であるから、武井咲に比べれば鼻の下の伸び具合はとうぜん変わってくるわけで、剣心が薫殿に枯れてしまうのも無理はないと、妙な納得がある。


しかし、るろ剣は飛ばし読みしてたからわからんのだが、人誅編はこんな気持ち悪い話だったのか。新田真剣佑はなぜここまで近親相姦ライクにカスミンにたぎるのか。その昂奮には創作上の意味があるから余計に困るのである。第二の笑いがやってくるのだ。薫殿を弑しようとする新田。ところが嘔吐を催し断念してしまう。カスミンが作用したことになっているが、要は剣心と同様、これはメスに手加減を禁じ得ない性欲問題であり、話は堂々とメインモチーフに回帰したのである。オチで二人は連帯する。カスミンに狂わされた同士がメスに弱いオスの哀しさを共有したのであった。


性欲問題は新田が引き受けてくれて、しかも新田はオッサンではないから、加齢臭も何となく散らされる。剣心と薫殿はわだかまりなく手を繋げるわけである。相変わらず本編は冗長かつ荒唐無稽でコスプレ劇芝居も我慢がならぬ。が、最後はまた例のごとく、うれしい赤面を催される。くやしさもひとしおである。