徳には時間の概念がない

実践理性批判――倫理の形而上学の基礎づけ後悔は不合理である。もはや取り返しがつかないのだから、それにクヨクヨしても徒労である。これは、徳が時を区別しないことの例証である。


カントは徳の実例にあまり言及しない。史記プルタルコスを紐解けば、ギョッとする実例は枚挙のいとまがないのであり、言及する必要がないのだ。


なぜ人々は時に命を投げだしてまで徳を希求したのか。徳には時間の観念がないから滅ぶことがない。空間の観念がないから独りになることもない。